トム・ウェイツ
2010年04月20日
不毛地帯のTom Waits
いつ、どのアルバムを聴いても、トム・ウェイツは良い。
アサイラム→アイランド→アンタイとレーベルが移るごとに曲調、色合いが大きく変わっていくなか、でも、どれをとってもかわらず魅力を感じ続けさせてくれるというのは、ただこの特徴的な声や彼の存在自体が自分のツボにはまっているのだと思う。
写真は、トム・ウェイツのアサイラム・レーベル時代(ワーナー・パイオニア)のアルバム『Small Change』
1976年、3枚目のアルバムとして発売されたスモール・チェンジだが、そのライナーノーツを読むと・・・国内盤は、77年の来日前年になってデビューアルバム『Closing Time』(本国では73年発表)、2枚目の『The Heart of Saturday Night 』、ライブアルバム『Nighthawks at the Diner(娼婦たちの晩餐)』の3枚が同時に発売になったとされている。これは輸入盤でじわじわ人気が出てきて、来日が決まったと同時、ほぼ1年以内に4枚ものアルバムが慌てて国内発売された、という感じなんだろうか?
初めて聴いたTom Waitsはアイランド・レーベルから発表された82年の『ソードフィッシュトロンボーン』だったので、このLPは数年後追いで手に入れたことになる。トムが最後に来日したのが78年。結局これまで生で観る機会はなかったのが少し恨めしい。
恐ろしく久しぶりに、このアルバム『Small Change』に針を落としてみた。
予想を大きく裏切るクリーンな音で、相当大事に聴いていたんだなと当時を振り返った。
先日mono-monoさんのブログで、このアルバムA面1曲目である『トム・トラバーツ・ブルース』がドラマ『不毛地帯』のエンディングテーマに使われていたということを知った。放送終了後のことである。
再放送があれば、是非見てみたいなと思っている。
http://mono-mono.jugem.jp/?eid=630
"Tom Traubert's Blues (Four Sheets to the Wind in Copenhagen)"
トム・トラバーツ・ブルース骨折り損のくたびれ儲けってわけだけど
月のせいじゃねえ
身から出た錆ってことよ
あした会おうな おい、フランク
2、3ドル借してくれねえかな
もう何もしねえで、デレッとしてたいからよ
お前も俺と一緒にノラクラしてるかよ俺は真暗な裏通りの被害者なんだぜ
ここにいる兵隊達にゃもう飽き飽きしたぜ
誰も英語を話せねえし、全てがメチャメチャだ
俺の運動靴はぐっしょり濡れちまって
踊りに行きてえと思うけど、これじゃ行けねえよな
お前も俺と一緒に踊りに行きてえかよ犬どもは吠え立てるし
タクシーは道のはじに止まってるぜ
もっとましなことができそうなもんだがなあ
俺を刺し殺してくれって頼んだら
お前は俺のシャツを引き裂きやがった
俺はひざまずいてお前に頼んでるんだぜ
オールド・ブッシュミルを飲みほして、俺は千鳥足だ
お前はその短剣をどっかに捨てちまった
その姿が影になって薄明るい窓に映ってるぜ
ワルツィング・マチルダでも聞きながら、
デレーッとしてたいんだよ
何もしねえで、ブラブラしてたいんだそう、俺はお守りの十字架を無くしちまい
あの娘にキスしたのさ
そう、そばにあったスロット・マシーンが見てたぜ
薬の売人、冷酷できたねえ看板
ストリップ劇場で体をくねらす女達
みんなワルツィング・マチルダに合わせて
ダラダラやってる お前もその仲間に入った
らどうだい、俺と一緒にお前の同情なんて欲しくもねえよ
ずらかった奴等は、街にゃ夢なんてもんは
ありゃしねえって言うぜ
殺人犯を追いまわす捜査網、想い出を売る亡霊
みんなとにかく何かしたがってるのさ
ダラダラした生活に飽き飽きして
何かすげえ事が起きるのを待ってるってわけよ水兵にかたっぱしから聞いてみな
看守の奴からぶん捕った鍵
車いすに乗った老いぼれ爺さんは
マチルダが被告だってこと知ってるぜ
奴は百人くらい殺っちまったんだからな
お前の後だってどこまでも付きまとうだろうよ
マチルダに追いまわされる、
マチルダに掴まっちまうぜ、
お前も俺みたくマチルダから
逃げられなくなっちまうんだぜ使い古してボロボロのスーツ・ケースと
どっかの安ホテルで
受けた傷は二度と直りゃしねえ
気のきいた香水をつけた女もいねえ
着古したシャツにゃ血と酒のしみがある
街のそうじ人さんよ、おやすみ
夜警のおっさん、街灯をつけて歩くおっさん
それにマチルダよ、おやすみ
(日本盤対訳:山本沙由理)
ずぶずぶの酔っぱらいのたわごとのようでもあり、
全てをあきらめて墜ちてゆく男の遺書のようでもあり。
でもトムが歌うその声は、妙に広く大きく包み込むようで強い意志?も感じて。
それが歌詞とのギャップも同感も同時に感じる要因なのかもしれない。
そうしてそんなニュアンスで、いつも煙に巻かれてしまう。
2009年08月05日
Deutsche Musik
クラシックならゴロゴロ馴染みある名前が出てきそうだけど、最近の人はというと、あまり聴いてなさそうな気がする。
数少ない記憶のあるミュージシャンとしては、
・マイケル・シェンカー・・・ギター小僧だった昔、結構聴いていたなー。あのジョニーBグッドは衝撃だった。
・クラフトワーク・・・そんなに趣味だったわけではないけど、やっぱり耳に残るピコピコ。
・アインシュツルテンゼ・ノイバウテン・・・よく理解しないままだったけど「ノイズ系」が流行った頃の記憶。
・クラウス・ノミ・・・エイズで亡くなった後に知ったミュージシャン。ガスおじさんみたいな風貌とハイトーンの声が怪奇的だった。
こうやって思い出しても、なんだか振り切ってるミュージシャンが多い気がする。お国柄なのか?
そんなドイツ音楽の中でも自分の中で別格なのがクルト・ワイルかなぁ。
この音楽家に興味を持つきっかけは、スティングやトム・ウェイツが参加していたので聴くことになったいたクルト・ワイルのトリビュートアルバム。
『Lost in the Stars / The Music of Kurt Weill』
今思えば、スティング、トム・ウェイツの他にも、マリアンヌ・フェイスフル、ルー・リード、トッド・ラングレンといった蒼々たるメンツの圧倒的な音楽に、クルト・ワイルの存在を後追いで知ることに。後追いといえば、サッチモのマック・ザ・ナイフが、このクルトワイル・三文オペラの『The Ballad of Mac the Knife』だったことを知ったのもそうだった。
そして、このアルバムきっかけ、Tom Waitsつながりとしても好きになったウテ・レンパー。
『Kurt Weill / Ute Lemper』
このアルバムの毅然とした歌いっぷりのドイツ語曲を聴いていると、いや、美しいなと感心してしまう。
ちなみに改めて曲名を確認したら、その中に「Moritat Von Mackie Messer」とあり。
そうだった。マック・ザ・ナイフの事をモリタートと呼んでいたことを思い出し。
辞書で調べたら、Moritat = Ballad となっていて、そうか、そういう意味だったのかと今になって理解する。
旧友との再会が、こういう音楽との出会いも思い出すきっかけになった事も、また嬉しく。
2007年12月10日
Swordfishtrombones / Tom Waits
トム・ウェイツにはまっていったきっかけになったアルバム、「ソードフィッシュトロンボーン」。
ある意味でこれまでの音楽嗜好の方向を大きく変えてくれた1枚だった。
友人からもらった1本のカセットテープの中に入っていた曲「In the Neighborhood」を聴いて以来、一気に引き込まれてしまって。それからずいぶん長い間トム・ウェイツを追っかけて行くことに。
レコード、CD、映画、ビデオと追っかけ出したら止まらなくて。そして関係したミュージシャンつながりも好きになっていった。
ラウンジリザースのジョン・ルーリー、
ミック・ジャガーの恋人でもあったマリアンヌ・フェイスフル、
ドイツの歌姫ウテ・レンパー、
変則的なギターのマーク・リボー、
ホリー・コール、などなど・・・。
映画でも、ジム・ジャームッシュの「ダウン・バイ・ロー」や「ナイト・オン・ザ・プラネット」の音楽、そしてコッポラの映画にチョイ役で出てくる姿を追ったりも。
いつぞやは「ライブで日本に来る」という情報を聞いて、その情報源であったイベント会社の知り合いに、スタッフとしてアルバイトとして使ってもらう約束まで取り付けていたのに、結局映画の仕事の都合で来日できなくなったと聞かされ落ち込んだり。
ピアノ曲「Grapefruit Moon」を弾きたくて、エレピを購入したりもした。
好きになってしまうとその欲求は底知れないもの。
いつかは生でライブを見てみたいものです。
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2007年12月09日
Big Time / Tom Waits
そもそもFalling Downの意味を勝手に布団に沈み込むと思っていたていたが、良く考えると少しおかしい。何の根拠もなかったので本当の和訳が心配になって辞書をひいた。
「falling down」の言葉だけだと私の電子辞書で出てこない。
何故?「falling down drunk:ぶっ倒れる酔っ払い」との記述。
まあ、ぶっ倒れるという意味なら、布団に沈み込んだ(倒れこんだ)自分をさしているとしたのは、さして外れてなかったのか?
それでもはいまいちすっきりしないので、CDの歌詞を見てみることに。
近頃はPCに取り込んだ音源を聴いているので、大量のCDから目的のものを探すのはしんどい。もともと私は洋楽の歌詞を理解しないまま聴いているケースが殆どで、それがPCから聴くようになってCDジャケを手に取ることがなくなり、さらに拍車がかかった。
幸いインポート盤ではなかったので、訳詩が付いていた。
「falling down〜falling down〜falling down」の所は、
「私たちは崩れ落ちている。そう崩れ落ちている」という訳。
さらに訳詩者によっては意味が大きく違う場合も有る、という思いで原曲を探すことに。それはトム・ウェイツの主演映画「BIG TIME」のサントラのような位置づけの同名タイトルのアルバム「BIG TIME」。
Big Time
そもそもこの映画、トム・ウェイツのドキュメンタリーのはずが、なんとも幻惑的な映像で、映画館の中でおかしな異次元に引きずり込まれ、終わったときには何故だか重い気持ちになってくたくたに疲れて出てきた記憶がある。曲の素晴らしさに反して決してすがすがしい気持ちにはなれなかった。
訳詩の話しに戻るが、「BIG TIME」収録の「falling down」の訳詩をみると、少し「Holly Cole」のものと少し違うのに気がついた。
基本的な詩のすじは、・・・
「ある男には好きな女がいる。しかしその女は別の男が好きである。そしてその彼女の好きな男はアウトローで、女は男のそんなところが好きなのだ。」
そこはだいたい同じなのだが、TOMの訳にはそこで
「おまえ(女)は男とどんどん下り坂を転げ落ちていくだろう。そんあアウトローな男と落ちていき、そして安ホテルで薬で死んでいくだろう。」
というような意味合いの突き放した恨みが入ったような内容だった。
それに反して、ホリー・コールのほうの訳は
「(アウトローな)男が犯罪に手を染めて落ちて行く。それをその男に寄り添うように女が薬で崩れ落ちていく。そして自分も崩れ落ちて行ってしまう・・・」
そういうニュアンスだった。
訳詩者を見ると、前者は男性。後者は女性。
男の訳詩者は「落ちていく女の最後を哀れみを持って見届ける」、という解釈で、女の訳詩者は「落ちていく女と供に自分も後を追うように崩れ落ちていく」という解釈にとれる。
自分はどちらのタイプだろうか?
自分の中の破滅願望をいつも抱えて生きている私としては、恐らく後を追うように崩れ落ちていくのかな?
改めて歌詞を少し理解した私は、
今の熱に浮かされたような体調の中、
「falling down」と供に布団をに溶け込んで、
さらに深いところに落ちていく感覚に包まれた。
Beautiful Maladies: The Island Years
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2007年12月08日
Temptation / Holly Cole
テンプテーション
体調の悪い時には、あまり刺激の強い音楽は聴きたくないもの。
安心して穏やかに聴ける曲を選び、体を癒してもらいます。
体調がすぐれなかった今日選んだのは、
ホリー・コールのアルバム、「テンプテーション」。
全曲、好きなトム・ウェイツの曲を優しく歌ってくれる。
「Falling Down」を聴きながら、布団の中に沈みます。
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2007年11月16日
『One From The Heart + Tom Waits』
フランシス・フォード・コッポラの監督作品です。
説明はいらないと思いますが、あの「地獄の黙示録」の。
この「ワン・フロム・ザ・ハート」という映画、
ストーリーは全然ひねりもない恋愛ドラマです。
どう考えても前作との対比が余りにも際立つ気がします。
さらに、興行的には致命的な失敗だったそうな。
でも凄いんです。
当時オール・セット撮影だという事で話題になったようですが、
凄いお金の掛け方をしています。
普通ロケやCG(80年代当時はどうだか知りませんが)で
済ませるようなところを全てスタジオにセットを作成したらしい。
円谷プロも真っ青の。
町並みや道路、カジノや空港も全てセット。
でっかい飛行機までスタジオの中で飛んでます。
そしてそれが全てリアリティーが無いというのがなんとも・・・
いかにも作り物の感じがする壮大なおもちゃのような。
「地獄の黙示録」で長期間ロケを張る金の使い方をしたあと、
今度はこれです。
凡人が天才を理解する難しさ、というところですね。
でもこの映画は好きです。すんごく。
曲は全てトム・ウェイツでもう言うことがありません。
作り物の街の陳腐な恋愛劇にトムのだみ声が命を吹き込み
怪しい輝きを放ちます。
うっとりしてしまいます。
そしてナターシャ・キンスキーのキュートなことといったら!
ワン・フロム・ザ・ハート
コッポラ『ワン・フロム・ザ・ハート』が好き。 - livedoor Blog 共通テーマ